自動車整備
株式会社ナルネットコミュニケーションズは、2024年12月に自動車整備工場を対象としたアンケートを行いました。
整備士数や入庫台数の増減、補助金制度の利用などについて、幅広く質問を実施。2,308か所の整備工場から得た回答を詳しくお届けします。
まずは回答いただいた整備工場の工場資格や規模感がわかるデータをご紹介します。
以上のような整備工場からいただいた回答をご紹介します。
まずは有効求人倍率4.55倍(2021年)と深刻な人手不足とされている整備士について、実際に整備工場で働く整備士が減っているのか質問しました。すると、整備士が「減っている」と回答した整備工場は32.6%、「変わらない」が61.0%。「増えている」と回答した工場はわずか6.4%でした。
増加はしていないものの現状をキープしている整備工場が過半数を占め、約3分の1の整備工場で整備士が減少していることになります。
ではどのような整備工場で整備士が減少しているのでしょうか?
整備士数の増減を整備工場規模(※1)ごとに整理すると、以下のグラフのようになりました。規模が大きくなるほど整備士減少の傾向が強くなることが見てとれます。
※1:整備工場に在籍する整備士の人数から規模を区分
続いて、昨年からの入庫台数(※2)の変化について質問しました。業務量が減少していると回答した工場は19.2%。42.0%が「変わらない」、38.8%が「増えている」と回答しました。
※2:リースを含む、工場の全体の入庫台数
整備士の増減と同様に、入庫台数の増減を工場規模ごとに整理すると、以下のグラフのようになりました。
工場規模が大きくなるほど入庫台数が増加している傾向が強くなります。
つまり、整備士数が減っている整備工場と入庫台数が増加している整備工場、どちらも規模が大きい整備工場に集中しています。大整備工場ほど、現場がひっ迫している。そんな現状が浮かび上がります。
このように整備士が減少し、かつ入庫台数が増加している状況を鑑みると、今後、必要なタイミングで必要な点検整備を工場が実施できなくなるのでは?という仮説が浮かびます。
そこで今度は、「今後、整備車両の受入れ台数を増やすことができますか?」という質問の結果を見てみます。
結果は「受入れ可」と答えた工場が38.1%、「条件付き可」が26.2%、「受入れ困難」が35.7%と、1/3以上の工場が受入れ台数を現状より増やすことができないと回答しました。
受入れ困難の理由は「整備士不足」が47.3%と最も多く、次いで「管理業務のキャパオーバー」が20.1%でした。全体の6割超の工場で人的リソース不足が原因で受入れ困難としています。
受入れ台数の増加可否を規模ごとに整理すると、整備士数6~7名の整備工場を境に、規模が大きくなるほど受入れ困難な整備工場が増加する傾向にあります。
整備士の減少と入庫台数の増加。相反する2つの状況が大規模工場を中心に同時発生しています。整備士養成学校の学生数の減少や、クルマの使用年数の伸びなどを考えると、この状況は徐々に規模の小さな工場へと波及していく可能性も考えられます。
ここまでのデータで見たように自動車整備業界の人手不足は、単に「整備士が減少している」ということではなく、工場ごとの入庫台数が増えていること、加えてOBD検査・点検やエーミングなど自動車整備に求められる作業の変化や工数増加なども関連しています。
整備工場のキャパシティを確保するためには、単純に作業人数を増やせばいいというわけではなさそうです。しかも生産年齢人口が減少して、どの業界も人手不足といわれているこの時代、人材確保は簡単ではありません。
重要なことは、人材の定着と育成を図り個々のスキルを上げることと、整備工場の仕組みを改善して生産性を上げていくことのように思います。例えば、デジタル化や最新設備/機器の導入などです。
もちろん、設備/機器の導入には多額の資金調達が必要なものも多く、限られた予算の中で導入を決断することは難しいこともあると思います。
しかし現在、先ほども述べた通り、どの業界も ーー特に中小企業は人手不足です。そこで政府や各自治体は、生産性向上のためのさまざまな補助金を準備し、中小企業をサポートしています。
整備工場では、どれくらい補助金が利用されているのでしょうか?
国や地方自治体から給付を受けられる補助金をこれまでに利用したことがあるか?質問したところ、「利用したことがある」と回答した整備工場は42.1%。「検討・相談中」の7.8%を含めると約半数が利用していることになります。
裏を返せば、半数の整備工場は補助金を利用していません。
中小企業庁が発表する2020年版 小規模企業白書によると、補助金・助成金の利用率は、小規模事業者が62.5%、中規模企業が69.2%。全業界に比べ自動車整備業界の補助金利用率は、低い傾向にあるとわかります。
では、整備工場ではどのような補助金を利用しているのでしょうか?
これまでに利用したことのある、または利用予定の補助金について質問してみました。すると、「IT導入補助金」と回答した工場は19.5 %、「小規模事業者持続化補助金」が14.4%、「ものづくり補助金」が8.0%でした。
申請手続きが比較的簡単で審査がスムーズといわれるIT導入補助金や、対象が限定的でライバルが少ない小規模事業者持続化補助金など、採択しやすい補助金の利用が多い傾向にあります。
一方、これまで補助金を利用したことがない整備工場に補助金を利用しない理由を質問してみました。すると、「申請手続きに時間がかかる」と回答した工場が18.8%、「何に使えるかわからない」が18.2%、「手続きが面倒くさい」が17.4%でした。
補助金利用には時間や手間、知識を必要とするため、人手不足が深刻化する整備現場では利用が進んでいないと予測されます。
しかし、前述の補助金を利用しない理由が解決できれば、補助金を利用した設備投資によって生産性を向上し、キャパシティの確保・拡大も可能になるのではないでしょうか?
モビノワでは補助金に関するお悩みを持つ整備工場さんのサポートを行っております。補助金申請サポートや、補助金に関する情報提供などさせていただきます。生産性向上の1つの選択肢として補助金利用をご検討されている方は、ぜひお問い合わせください。
※お問い合わせの際は、工場名、電話番号、担当者名を必ず入力ください。
今回のアンケートでは、クルマの高度化や使用年数の伸びなどによってアフターマーケットの需要が高まっている一方、整備士数の減少など人手不足によって車両の受入れが追い付いていない状況が見てとれます。またその傾向は、規模の大きい工場ほど強くなっていました。
整備業界では人材の定着と育成、そして生産性向上などによってキャパシティを確保し、今後の点検整備ニーズに応えていく必要があります。
モビノワはクルマの安心安全な運行を支える整備工場の皆さまが抱える課題を解決するため、さまざまなソリューションをご用意しています。人材採用・育成、生産性向上、売上拡大、事業承継など、どんなことでもお気軽にご相談ください。
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事務局 馬場葉月
学生時代にメディア情報学を専攻、2022年4月にナルネットコミュニケーションズへ新卒入社。 自動車業界、整備業界について日々勉強中。配属後、はじめていただいた任務がモビノワの運営でした。 モビノワが自動車業界の方たちのお役に立つメディアとなるよう、頑張っていきます。 …
編集長 田中伸明
自動車整備士として社会人をスタートし、テクニカルライター、整備士教育コンテンツ/研修の企画・制作、店舗改善業務などに携わりました。もっと整備現場の近くで働きたい!という思いからナルネットコミュニケーションズへ参画。「<人とモノの移動を支える人>を支える人になる。」を目標に日々活動中。 …
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