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合成燃料(e-fuel) ーー今知っておきたい自動車用語

今回取り上げる自動車用語は「合成燃料」。「e-fuel」とも呼ばれています。

カーボンニュートラルを達成する上で、重要な技術のひとつです。
既存のエンジン技術やインフラを活かしながらカーボンニュートラルに貢献するという、電気自動車とはまた違った角度からのアプローチが可能です。

合成燃料がガソリンや軽油に取って代わったとしても、ユーザーは今まで通りガソリンスタンドで、短時間で燃料を補給して走行することができます。自動車整備工場では、既存の知識や技術を活かして点検整備ができますし、大きな設備投資も必要なさそうです。そう考えると、電気自動車よりも社会的に受け入れられやすく、普及しやすい技術かもしれません。
そんなにいい技術ならすぐに採用!…と言いたいところですが、やはり開発途中の新しい技術。普及のためには、まだまだ課題があるようです。

このコラムでは、合成燃料とはなにか?から、自動車メーカーの動き、そして自動車整備工場に与える影響はどのようなものが考えられるか、見ていきたいと思います。

合成燃料とはなにか?

合成燃料(e-fuel)とは

合成燃料はカーボンニュートラル実現に向けての運輸部門における有効な手段として注目を集めています。

従来、合成燃料とは天然ガスや石炭などのような原油に由来しない燃料のことを指していました。しかし、経済産業省 資源エネルギー庁の合成燃料研究会が2021年4月に発表した「中間とりまとめ」において、合成燃料について以下のように定義されました。

合成燃料(e-fuel)とは

引用:経済産業省, 合成燃料研究会 中間とりまとめ, p.2 合成燃料の定義, 2021.4

「合成燃料とは」のイラストにもあるように、合成燃料を使用してもガソリンと同じようにクルマの走行中にCO2を排出します。
しかし、合成燃料は発電所や工場などから排出したCO2を回収してつくった燃料です。そのため、排出したCO2の量と回収したCO2の量が同じになれば、差し引きゼロ。つまり、大気中のCO2の量を増やさないしくみができあがることになります。

合成燃料(e-fuel)によるカーボンニュートラルの実現

このように、実質の排出量をゼロにしてカーボンニュートラルに貢献できる合成燃料には、さらに普及のための魅力的なメリットが複数存在しています。

合成燃料(e-fuel)のメリット

出典:経済産業省, 合成燃料研究会 中間とりまとめ(2021.4)と、資源エネルギー庁 合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会2023年 中間とりまとめ(2023.6)から筆者作成

つまり、ガソリンや軽油と同等に取り扱うことができるということです。ユーザーは合成燃料に対応したクルマを今までのクルマと変わらず、ストレスなく使用することができます。ユーザーに行動変化を求めない。これは、合成燃料が普及していくためのとても重要な要素だと思います。

その一方で、課題としては製造コストがあげられます。水素価格の影響を大きく受けるのですが、1リットルあたり約300円~700円かかるとされています。コスト低減は、今後の普及に向けて解決すべき課題です。合成燃料はコスト低減を図りながら、2040年までの商用化を目指しています。

自動車メーカーの動き

では、合成燃料普及に向けての自動車メーカーの動きには、どのようなものがあるでしょうか?
2024年5月28日、トヨタ自動車株式会社、株式会社SUBARU、マツダ株式会社の三社は、新たなエンジン開発の合同記者会見をおこないました。

その中で、合成燃料の話題に触れています。

合成燃料(e-fuel)によるカーボンニュートラルの実現

引用:トヨタ自動車株式会社, ニュースリリース, SUBARU、トヨタ、マツダ、カーボンニュートラル実現に向け、電動化時代の新たなエンジン開発を「三社三様」で宣言, 2024.5.28

このように既存のエンジン技術と既存のインフラが活用できる合成燃料は、カーボンニュートラル実現に向けた有効な手段のひとつだと、自動車メーカーも考えています。

合成燃料が整備工場に与える影響は?

さて、毎回想像を膨らませながらいろいろと考えるこの章ですが、今回ばかりはあまり大きな変化はないように思います。

合成燃料が普及したとしても、既存のエンジン知識、メンテナンス技術が活用できます。大きな設備投資も必要ないでしょう。合成燃料は化石燃料と同じ炭化水素が主成分となるため、燃料系統に悪影響を与えることも少ないと思います。想像する限りは、空燃比学習や補正への影響もそれほど大きくないように感じます。

とはいえ、先ほどの自動車メーカー三社の記者会見でも「電動化時代のエンジンを変えていく」とありました。エンジンだけの時代に戻るのではなく、電動化時代のエンジンのあり方を考え、進化させていくということです。

合成燃料の場合、現在のエンジン技術やインフラがそのまま使えます。それでも、新しい技術が整備にどのような影響を与えるかは未知数です。情報を収集し、クルマの機能や構造、整備に関する知識や技術を更新し続けていくことは、クルマを取り巻く環境が大きく変化している現代において、大切なことだと感じています。

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編集長 田中伸明

自動車整備士として社会人をスタートし、テクニカルライター、整備士教育コンテンツ/研修の企画・制作、店舗改善業務などに携わりました。もっと整備現場の近くで働きたい!という思いからナルネットコミュニケーションズへ参画。「<人とモノの移動を支える人>を支える人になる。」を目標に日々活動中。 …

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