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アンケートデータから見る専業自動車整備工場の新技術対応

株式会社ナルネットコミュニケーションズは、2023年12月に自動車整備工場を対象としたアンケートを実施しました。
年間入庫台数や整備士数、リフト数など整備工場の規模に関する内容から、電気自動車やOBD検査への対応などの新技術・新制度に関する内容まで、幅広い質問を実施。1,931か所の整備工場から回答を得ました。
変化の真っ只中にある自動車業界において、ユーザーの安心と安全を守る自動車整備工場の状況をお届けします。

回答いただいた自動車整備工場の規模

まずは、回答いただいた整備工場の規模がわかるデータからお届けします。

1工場あたりの年間入庫台数

令和4年度版の自動車整備白書によると、専業工場の年間入庫台数の平均値は948台。専業・兼業・ディーラーを合わせた平均値が1,593台となっています。(※)
今回のアンケートでは中央値が1,440台、平均値が2,356台。ナルネットコミュニケーションズの提携整備工場が回答の約82%を占めていることから、リース車両を多く取り扱っており、比較的台数規模の大きな工場が多くなったと想定されます。

※出典:令和4年度版自動車整備白書, 一般財団法人日本自動車整備振興会連合会, P.7自動車整備業諸表

1工場あたりの整備士数とリフト数

年間入庫台数と同様、令和4年度版自動車整備白書によると、整備要員数は平均で1工場あたり4.4人。
対して、アンケートに回答いただいた整備工場は、中央値で4人。平均値が5.06人と、こちらも自動車整備白書の数値に比べると、やや大きい数字となりました。

※出典:令和4年度版自動車整備白書, 一般財団法人日本自動車整備振興会連合会, P.7自動車整備業諸表

以上のような工場規模の皆さんからいただいた回答を「電動化への対応」と「新制度への対応」の2つの軸で見ていきます。

電動化への対応

電気自動車(BEV)の点検・整備実施割合

電気自動車の車検については849工場(44.0%)が実施経験ありとしています。また、定期点検についても802工場(41.5%)が実施済み。電気自動車の普及率や、ディーラーでのユーザー囲い込みが強いと思われる中で、比較的多くの工場が対応し始めている様子がうかがえます。
一方で高電圧部位の故障修理を経験した工場は213工場(11.0%)にとどまりました。電気自動車の故障が少ないことや、まだメーカー保証期間が残っており修理はディーラーでおこなっているなどの要因が推測されます。
ただし、絶縁手袋など高電圧部位の点検・整備を実施する際に必要な安全装備は66%の工場で保有されています。国内市場ではハイブリッド車が既に定着していることもあり、高電圧部位の整備ができる環境は多くの工場で備わっているようです。

充電設備の設置

整備工場での充電設備の設置については、501工場(26.4%)が設置済み。特に指定工場では31.4%にあたる380工場が設置済みと高い設置率であることがわかりました。点検・整備で数日クルマを預かる場合や、故障診断のための試運転をおこなう場合などには、工場に充電設備があると利便性は高くなります。
また、2030年に30万口の充電設備を目指している(経済産業省 第6回充電インフラ整備促進に関する検討会)中で、まだまだ充電スポットは不足しています。この状況において充電設備を他社に先駆けて設置することで、自社の管理ユーザー以外にも充電設備を使用する機会を提供でき、新たな顧客接点が生まれる可能性も考えられます。

新制度への対応

OBD検査の準備

OBD検査の準備が完了しているとした指定工場は877工場(72.2%)、認証工場は514工場(74.2%)。指定と認証の区別なく準備が進んでいるようです。わずか2%ではありますが、意外にも認証工場が指定工場を上回る結果になりました。ツールの選定をまだ考えている工場も多くあると想定され、2024年10月の実施に向けては比較的順調に準備が進んでいるように感じます。

しかし、国土交通省が発表した「OBD検査の準備状況を把握するための指標」によると、OBD検査システムへのID登録率と初回ログイン完了率はオンスケジュールで推移しているものの、初回アプリ使用率がわずか12%と低迷(2024年3月11日現在)。3月末目標の45%との差は大きく、早急な原因の究明と対策の実施が必要とされています。

今回のアンケートではログインやアプリ使用率は確認していませんが、工場の方にヒアリングすると「4月になったら一度、トライアルをしてみる」や「習得に時間がかかるものではないから、もう少ししたら」といった声がありました。10月の開始まで半年を切りました。3月の繁忙期を乗り越えて4月に入り、そろそろアプリ使用率も上がってくるかもしれません。

電子制御装置整備の認証取得割合

OBD検査への対応が進む一方で、進捗状況が芳しくないのが電子制御装置整備の認証取得です。
特定整備認証取得の猶予期間が、2024年3月いっぱいで終了しましたが、国際オートアフターマーケットEXPO 2024での国土交通省の発表によると、2024年1月末時点での電子制御装置整備の認証取得数は52,917工場。整備事業者数を91,711工場(※)とすると、なんと42.4%の整備工場が取得していないことになります。
今回のアンケートでは、全体で1,549工場(88%)が取得済み。指定工場の取得率は非常に高く97%と出ました。
一方で認証工場は635工場中461工場(72.6%)と、指定工場に比べて約25%も取得率が低くなりました。未取得の整備工場については、故意に取得していないのか、何らかの理由で取得できないのか、もう少し深掘りして調査していきたいと思います。

※出典:令和4年度版自動車整備白書, 一般財団法人日本自動車整備振興会連合会, P.7自動車整備業諸表

新技術への対応や新制度への対応など、自動車整備工場は変化を迫られています。進化するクルマを点検・整備するためには、技術力もさることながら、点検・整備を安全に、かつ効率よく実施するための設備を拡充することの重要性が高まっているように感じます。そんな中で今回のアンケートデータからは、緊急度の高い項目を優先しつつ、電気自動車をはじめとした新技術への対応に向けて少しずつシフトされている様子がうかがえます。
それでも、電子制御装置整備の認証取得からもわかるように、変化の流れに追従していない(できていない)整備工場があることも事実です。追従したいのにできていない整備工場には、個々の課題に合わせたサポートが必要かもしれません。モビノワでも、できる限りサポートできればと考えています。もし、サポートが必要な整備工場があれば、お声掛けいただければと思います。

さて、整備工場アンケートについてのコラムは、後編も予定しています。
後編では整備工場の情報収集に焦点を当てていきますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。

<2024.5.15更新>
整備工場アンケート後編のコラムを公開しました。以下のバナーをクリックして、ぜひ後編もお楽しみください。

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自動車整備士として社会人をスタートし、テクニカルライター、整備士教育コンテンツ/研修の企画・制作、店舗改善業務などに携わりました。もっと整備現場の近くで働きたい!という思いからナルネットコミュニケーションズへ参画。「<人とモノの移動を支える人>を支える人になる。」を目標に日々活動中。 …

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